『画家になるには?』ー《後編》
画家とは?画家になるには?今回は、私がいかに「人に役立つ美術」への思いを持つようになったか、
その触りを書いておくことにします。
そして、それが「画家になるには?」と問う人たちに、
何かしらかのアドバイスに繋がればと思っています。
存在の希薄さ
私は子供の頃から、比較的に絵画をする人が周りにいて、恵まれた環境があったと思います。
父は美大卒でしたし、母方の6人姉妹の一人の叔母は、
教育大の美術科を出ていて、何かと影響があったかもしれません。
でもそういうことは、直接情熱には繋がっていないものです。
美術をせずにはいられない、そういう精神的な問題に追い込まれた経験が、
おそらく今の自分を形成していると思われます。
実は私の経歴には、1年のずれがありまして。。。。
中学卒と高校卒を履歴書に書いても、あまり気づかれないのか、
聞かれたことがないので、隠すわけでもなく、
言わないでいたと思いますが、
私は、その時、高校浪人をしたのです。
そしてその1年間は、公立の定時制に通っていました。
自分が受験ということの意味をあまり自覚していなかった、
ということもありますが、
何かよくわからないことに巻き込まれたのだとも聞きました。
真意は未だに知りません。
ただ、受験に落ちた時に、学校関係者がお詫びに来たようでした。
今思えば、ある時、美術の先生に廊下で引き止められて
「川田の成績は本当は10だけれど、
レベルの高い高校にどうしても入れさせたい生徒がいるので、
10をその子にあげて欲しい。9でおまえは大丈夫だから。...」
というようなことを言われたことと、
何らかの関係があったのかな、と思い当たるくらいです。
その時に軽い気持ちで「いいですよ。」と言ってしまった自分を、
その後何度か悔やみましたが、今思えば、
それはそれで良い経験になったぐらいなものです。
しかしそういうことを今までに何度も繰り返しているようにも思われ、
それが私のお人好しで弱い性格の部分にもなっています。
「いつも二人並べられて、必ず私が引き下がる」そういう性があるのです。
「絶対に譲らない」ということが、生存の法則であると、
ようやく最近になって気がつくようになりました。
馬鹿ですね、私は。。。。しかし、いつでも不思議と、
引き下がった時には大きな試練が来ますが、
その後にその引き下がりで失ったもの以上のものが返って来るというジンクスもあるのです。
いろいろな場面で。。。
それがまた私の人生の変なところであり、波瀾万丈の所以です(苦笑)。
しかし、当時受験に失敗した事、いきなり夜通学して勉強することになったこと、
ここではあまり詳しく書けませんが、それにともなって、
精神的、肉体的な屈辱があったことは、
15才の私にはかなり大きなダメージとなりました。
そこで知った事は、
「自分の存在はこの社会の中で、取るに足らない脆弱なものである事」
ただただそのことばかりを思い知らされました。
つまり、この社会に何らかの存在を発揮出来ない者は、
本当に社会の中で存在する場を確保し難いのです。
気づくと、次々と居心地の悪い所に追いやられ、
自分の力でそこから脱するのには大変な努力を必要とすることになってしまいます。
絵を描くことで気づいた「自己の存在の意欲」
その時に私を救ったのが、「絵を描く」ということです。
これをしている時にだけ、誰の目を気にする事なく、
自分が自分でいられる気がしたのです。
完成する度に達成感がもあり、だんだん描きたいものが広がったり、
どういう絵を描きたいかを考えたり、
そもそも世の中にはどんな絵があるのかを知りたくなります。
そういういろいろなことに頭を馳せている内に、
絵を描くことが私にとって、私の存在そのものである
と言う程までに思えるようになりました。
そして、その時に、この時間を維持していくにはどうしたら良いかを、
その時の未熟なりの頭で考えるようになりました。
それが自分の存在の力を発揮させる、
初めての意欲的な自分であったのです。
どこか私には存在が希薄なところがあり、
すぐに社会から遊離してしまう傾向があるのですが、
それをかろうじていつも美術が引き止めてくれるように思われます。
つまり、その時に考えた答えは
「社会に自分がある価値を示す事ができれば、自分が好きな事をしても許される」
ということだったと思います。
今はかなり答が違うんですけどね、ちなみに今の答えは
「自分が心からしたいということが、社会の中でも役立つものであれば、それをずっとしていくことができる」です。
この違い、わかりますか?(コメント欄などを利用して、ご意見を頂ければ嬉しいです。)
その時に出した答えに従って、その当時の私は、通っていた定時制の昼間の高校、
(その地域では受験校としてトップでした)そこに受験し直したのでした。
つまり「自分がしたいことがあったら、
まずは自分の場所を自分でつくらなければならない」
ということを、16歳にしてようやく気づいたのでした。
具体的には、とにかく勉強をしたのです。
屈辱を挽回し、自分のしたい事をするには、
ただただ自分の価値を自分でつくるしかないと思い至りました。
すごく気が遠くなるほど自力で勉強しました。
あまりに勉強したので、実は試験問題の予想が、ある時に頭に浮かんで来たのです。
つまり、試験をつくる人の気持ちまでわかるようになっていました。
そして、受験当日、試験用紙を見て、
本当に気絶するかと思う程、目の前が真っ白になりました。
こういう経験ってはじめてなのですが、一種の恍惚状態にあったと思います。
自分が予想していた問題そのものだったからです。
結果は、言わずもがなです。
その次の年から、昼間、高校に通う生活が始まったのです。
4年間高校で勉強したことになります。
今でも、もっと勉強したいので、その時の1年は、とても有意義であったとも言えますが、
当時の自分には、暗澹たる時代でした(苦笑)。幸も不幸も裏表とはこのことですね。
ですから、「人生を安易に自分で不幸と決めつけてはいけない」というのが、私の持論です。
このときの経験は、その後さまざまな問題を乗り越える時の自信と勇気に、
多大な影響を与え続けています。
つまり、この苦い1年の経験のお陰で、
いつも私は「たとえその時に引き下がったり、
逃してしまっても、それ以上の大切なものを得る」
そのように生きて来れたように思います。
社会に貢献する美術へ
長くなりましたが、
私は、自分の存在そのものをかけて、絵画を制作しています。
自分が、美術を通してこの社会でどうあることができるか、
何が貢献出来るか、絵画を制作しながらずっと考えて来ました。
そして、そういう生き方が出来る事への感謝の気持ちを
、美術や社会に還元させたいと思うようにもなって来ました。
何が出来るのか、まだはっきりとした答が出て来ているわけではないのですが、
ワークショップは、その一つの答のつもりでいます。
おそらく私のように、自分の存在を知るために美術を必要としている人が沢山いるような気がします。
そういう人に少しでも役立つ自分でありたいと思っています。
美術には、自己の存在の力を養う力があります。
そして、芸術に真正面から取り組めば、自ずと自己が確立して行きます。
そういう人が振り返って、画家になっているのです。ですから、
画家になろうとする人は、まず作品をできる限り制作する時間をつくること。
画面に向かって手を動かし続けること。
描かない時には、世界の全てをどのように自分が捉えているかを自覚すること。
その視点が出来るだけ独自のものになるよう日々研鑽することが必要なのです。
そして、このような自覚のある人には、必ず活動に対する協力や支援があり、
良い情報に自分が気づき、一歩一歩無理なく歩める道が開けて行くものなのです。
おわり
追伸:今、E.フロム著の『よりよく生きるということ』を読んでいます。
この題名が手元にあることが、まず大切なのだと気づいた次第です(笑)。A
精神分析研究者のE.フロムにしては珍しく具体的な方法論が書かれています。お勧めです。
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