「画家になるには?」《続編1》ー公募展について
画家とは?画家になるには?「画家になるには?」の記事にコメントが入り、
「後編はどこにあるのですか?」という問い合わせがありました。
その方も絵を描いている人でした。
後編は非公開にしてありましたが、昨日から公開にしました。
どうして非公開にしたかというと、
今までに沢山の人がこのことで私に質問をされるのですが、
本音を言うのがためらわれるからです。
私自身さえも、実のところ画家として全う出来るのかどうかと問われれば、
はっきりと断言出来る時は、相当テンションが上がっている時くらいなものです。
例えば、個展を開いている時とか、賞をもらった時などです。
制作している時というのは、
かなりテンションが上がっている時期というのも限られています。
だいたい完成を目前としている2週間くらいは、
本当に描いていて気持ちが良いのですが、
そこまでに描き上げる2〜3ヶ月というのは、
矛盾しているようですが、むしろ上手くいってないくらいが丁度良いのです。
上手くいく事ばかりやりはじめたら、そこで制作は成長しないし、
スタイルが出来上がり過ぎて、見る人もつまらなくなっていくものです。
私自身も同じことの繰り返しでは、ハラハラドキドキもしないわけで、
そのような作品は新鮮みを失って、何を目的に描いているかわからない作家に成り果てます。
難しい世界なのです。
それでも毎日単調な作業を繰り返す習慣も自然に身に付いていなければなりません。
その単調さの中に、どう革新的なことを取り入れて行けるかが問われます。
「画家になることは難しいことです」
しかし、もしかしたらいとも簡単に「画家であれる人」がいないとも限りません。
希望や夢を捨てずに、自分の可能性を信じて突き進むしかありません。
この私の極個人的な経験を伝える事で、何らかのアドバイスになればとも思い、
できるだけブログに書くようにしますが、
しかしそれも私の場合であって、全ての人に当てはまるわけではありません。
しかし、「画家」と検索すると、私のブログの記事に集中するそうで、
実際画家を名乗れる人は、もう日本には限られているでしょうし、
ましてやブログを書いている人も少ないのかもしれません。
何かヒントになればと、今回は公募展について書きたいと思います。
私の画歴を見て頂ければわかると思いますが、それなりに賞をもらって来ました。
これは賞をもらって評価を得たいというよりは、一重に生活が苦しかったからです。
しかし、そのことで、学んだ事は沢山あります。
まず公募展に出す以前に、「出さない」というポリシーを持つ人もいるかもしれません。
私はそのような人は、余程のお金持ちか意欲がないかであって、
そういうハングリーさのない人は、画家には向いていないと思わざるを得ないです。
「なるべく多くの人に作品を見てもらう努力の一つに、公募展はある」と考えることが健全です。
個展で身内ばかりしか見に来ない時代というのは誰でもあって、
そういう時にこそ、公募展を活用すれば、安価で自分を試せます。
それがチャンスとなって、画廊から企画のチャンスをもらうこともあるかもしれないのです。
そして、公募展には応募締め切りがありますから、
期限までに制作する癖が身に付くようになります。
1年に1回しか出せないものがほとんどです。
今年を逃したら、来年はもしかしたら描けないかもしれない、
そういう危機感を持って予定を立てて期日に間に合わせるのです。
そういう力が身に付くと、どんな状況にあっても自分なりの作品の完成というものが見えて来て、
そこで1歩画家に近づけます。
どういう公募展が自分に向いているかは、
まず、その公募展を実際に見に行く事がベストです。
審査員の名前で、だいたいその公募展の傾向が見えて来るようでしたら、
それはかなり入選に近いところにあります。
つまりその審査員がどういう人物で、どういう仕事をしているか、
その人はどういうことに興味を持っているかが見えていることが重要です。
しかし、大切なのは、知っているけれど、
だからと言ってその興味に合わせて作品をつくるのではないということです。
そんなことをし始めたら、おそらくあなたは画家として絶望的です。
しかしだいたいこういうところで人間は無意識につまづいているものです。
入選はするが受賞をしない、そういうことをどう考えるべきか?
それについてアドバイスできるのは、あなたはどこに向かって作品を見せようとしているか、
ここに答がすべて集結されます。
あなたは制作した作品を誰に一番共感してもらいたいですか?
家族ですか?
友達ですか?
日本の社会ですか?
グローバルな世界に向かってですか?
未来永劫、人類に向かってですか?
画家であろうとする人は、
後半3つに向かっていなければならないことは言うまでもありません。
確かにあなたの作品は、極めてあなた自身の内なるところから生まれて来るのかもしれませんが、
その自分という存在をどのように世界と関わらせて考えているかによって、
作品の持つスケールが変わって来ます。
それは一つの色を選ぶとき、画面の構図を考える時に、
自ずとその問題とともに判断している事なのです。
そういう自覚が作品にそのまま現われます。
先日画廊から、1通のメールが届きました。
2010年に制作して公募展に応募した「内なる自然」についてです。
この作品は入選どまりでしたので、巡回展を終わってからは、
しばらく忘れ去られていたのです。
先日初めて画廊に送ったところ、すぐに買い手がつきました。
そして買い上げて下さった方と
「なぜこの作品が受賞しなかったのかわからない」とお話しされたそうです。
私は返事のメールを書きました。その一部をそのままご紹介します。
「私の作品を買って下さる方々は、世の中の大多数を占める大衆の力に迎合しない、
かつそれにも関わらず実力を持った少数派に属する人たちです。
そしてこの少数派こそが、現在社会が抱える問題を洞察する目を持ち、
後世のために重要な働きかけの出来る人たちだと信じています。
私の作品が、大衆の支持を得て賞を取ること自体が矛盾しています。
『芸術家はその創作を通じて、別の分野の社会生活、
文化生活でこれから起こることの予知を行う
ーそれは時には、一世代も二世代も後のことである』と、
ミルチャ・エリアーデが著作に書いていました。
そのとおりだと思います。
私のその作品の内容は、
ずっと先に生きる人たちに理解されるものだと信じて疑いません。
このように画家というのは、人の理解を超えるような時間軸に生き
、かつ信念を貫くような図太い神経がなければ生存出来ないと言うのが私の意見です。
1回や2回の落選に、自信を失うようでは、素質がありません。
どんなに人に批判されようが、理解されなかろうが、描き続ける、
それが画家にふさわしい人物です。
最後にとてもわかりやすい大ヒットとなった本を一冊ご紹介。
それは『ハーバードの人生を変える授業』です。
そこにやはり「内なる声を聞く」という項目があるのです。
是非全文を読む事をお勧めしますが、
ここでは重要な所だけ抜き書きしておきます。
「自分の使命、天職を知るのは簡単なことではありません。
それでもなお、最大限の幸せを感じるには、
社会的な価値基準にとらわれることなく、
自分がしたいと思うものを見つける必要があります。
それは私たちの心のいちばん奥深いところから沸きあがってくる情熱です。
その声にしたがうことが、
幸福感と健全な自己信頼感を育てるためにとても大切なことなのです。」
そしてこの文章には、ある魔法を想定して、このような質問が投げかけられます。
「あなたは誰にも感謝されないし、仕事も評価されないし、
どんなにすばらしい生き方をしてもほめられないし、
どんなに裕福でも気がついてもらえません。
ただひとりあなただけが、自分がどんなにすばらしいかを知っているのです。
このような世界であなたは一体、何をしますか?
」(p.140〜142)
画家として活動していると、この魔法にずっとかかっているような状態になります。
そして極たまに、奇跡が起きて呪いが融けるような瞬間もないわけではありませんが、
しかししばらくすると瞬くうちに、魔法にかかります(苦笑)。
おそらく死ぬまでこんな調子だと思っていて間違いは無いでしょう。
画家になるには?この魔法の世界を安住の地というくらいに、
思える境地に至った人になることなのです。
それはどのような職種でも究極に立つ人は、
共通した境地にありますが、
画家が他の職と違うのは、
「画家」と名刺で自称するようになるにはかなりの自信が必要で、
中途半端な状態では画家として認められ難く、
ある究極の純粋な存在として選ばれた人のみを指し示す、
という点にあるのではないでしょうか。
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