はじめての個展ー1995ー三鷹市美術ギャラリー
画家とは?画家になるには?1995年の春のある日、私は多摩センターで1枚のスピードくじを買いました。当たって、まとまったお金を得たなら、たったひとつだけかなえたい夢があったのです。それまで5年間程作品をこつこつ制作していました。最初は自分の精神的な記録のようなものとして、個人的に大切にしてきたものでしたが、
作品がまとまった量になってくると、やがて画廊で発表してみたいと思うようになっていたのです。
どこの画廊ということはなく、ただ漠然と30万円くらいは必要なのではないかと勝手に思っていました。ただその当時、それまで勤めていた仕事を辞めてしまい、金銭的にはかなり厳しい状況でした。スクラッチくじを削りながら、「これが当たらなかったらあきらめろということかもしれない」と考えていました。結果、見事にはずれでした。
でもその時に今まで自分の心の底に押し込んできた、自分の本当にしたいことが目覚めたといってよいかもしれません。はずれてあきらめるどころか、どうしても個展で作品を発表したいと思ったのです。でもそれがすぐにかなえられるわけではないと、半ばあきらめていました。
それから2~3日して、ある人から電話を頂きました。内容は、今までの仕事を辞めてしまって困っているのならば、学芸員を募集しているところがあるから、あたってみたらどうかというものでした。私はその時に、「これからはその場しのぎの仕事をするのではなく、本当に一生をかけてしていく仕事をしていかなければならない」と自分に言い聞かせるのですが、それでも作家活動をすることと、食べていくこととが、どう考えても噛み合ないように思え、作家活動だけで生きて行くと決心する自信がありませんでした。
結局、決意が定まらないままに、翌日その募集要項を取りに出かけました。それが三鷹市美術ギャラリーでした。当時何かと比較するというような知識はなく、こういう公共の場所があるのはうらやましいと思って見渡した記憶があります。美術館ではないけれど、画廊よりも開かれている印象がありました。それで、受付のわきに置かれていた、雑多な情報を探しているうちに、あるチラシが目に飛び込んで来ました。
それは、「貸しギャラリー期間中の使用者募集」というものでした。三鷹市美術ギャラリーは、企画展期間以外は、市民の発表の場として提供されているらしいことがわかりました。一番小さなスペースが当時5万円程だったと記憶しています。「これなら資金的に可能性がある!」と胸が高鳴りました。そして、その募集期日が驚くことに、その日までになっていたのです。私はその場で何のためらいもなく、必要事項を書き込んで申し込んだのでした。
帰宅すると、昨日電話を下さった人からまた電話がありました。「応募した?」「別の応募をしてきました。」「....?」
募集のチラシに、多数応募の場合は選考有り。と書かれていましたが、数週間後に、「使用できることになりました。」という電話が来たのでした。
これが私の最初の個展のいきさつです。
その日から、きっかけは、ある日突然思わぬところから舞い込んでくる。というのが持論になりました。それまで思っていなかったことが、一度強い念を持って夢として描かれると、意外に早く実現へ向けて道が開かれていくように思われてなりません。
きっかけは、「スピードくじをひく」という行為ともいえますし、「ある電話」かもしれません。最初はその電話が解決に結びつくとは思えませんでした。でもその指定された場所は、自分の意識が思い描く場所(=学芸員として働く場所)にはならず、自分の意識の深い底にある強い希望をかなえる場所(=個展をひらく場所)になったのです。自分の意識の判断は浅はかで、頼りにならないものです。むしろ自分の意識ではなく、自分が未解決のまま、それでも出かけて行くという、行為、衝動こそに、解決に結びつく力が隠されていることが証明されたのかもしれません。
なぜそのタイミングで、その場所が与えられることになるのか。そして、その与えられたものが、その後にどれほどの意味を持つものであるか、をよく振り返って考えてみることがあります。
この出来事がなかったら、私の人生はまったく別のものになっていたかもしれません。でもそれがそうなるようになっていたそれまでの経過があって、それ以外の何かになりようがなかったとも思えます。そのようにして、人生は編み上げられているのかもしれません。
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