女性画家 ジョージア・オキーフ
読書本日は『Georgia O’Keeffe (Getting to Know the World’s Greatest Artists)』が売れました。この本は、アメリカの女性画家ジョージア・オキーフを本当に簡単な英語で紹介しているペーパーバックです。英語学習方法に多読という世界がありまして、一時期その方法で英語を独習していました。その時に買った本をまだ沢山蔵書しています。最終的にシドニー・シェルダンの『Master of the Game(ゲームの達人)』を辞書無しで読めるだけの力がつきました。しかし、この小説には、登場人物が画家となってパリで活躍する場面が出て来るのですが、あまりに刺激的で、途中で読めなくなり、そこで多読熱が下がりました(苦笑)。そもそも私は小説を読みません。架空人物の人生に付き合っている心の余裕がないのかもしれません。。。しかし、この小説は映画化されたり、日本でもアレンジされてテレビドラマになっているくらい、魅力的な小説なのです。
ちなみに、多読書として買ったこのGetting to Know the World’s Greatest Artistsのシリーズには、
アンディー・ウォホールAndy Warhol (Getting to Know the World’s Greatest Artists)
ポロックJackson Pollock (Getting to Know the World’s Greatest Artists)
フェルメールJohannes Vermeer (Getting to Know the World’s Greatest Artists)
を所蔵していましたので、Amazonで販売中です。
さて、話しがそれてしまいましたが、ジョージア・オキーフに話しを戻しましょう。
私はこの画家の展覧会カタログ(横浜美術館)を見ながら、毎日ため息をついていた時代があります。憧れの画家の一人です。もう久しく大きな展覧会が日本で開催されていないので、意外に知る人が少なくて驚くことがあります。今日はオキーフを少しだけご紹介致しましょう。
オキーフは、まずアメリカの女性画家としてもっとも成功した例の一つではないかと思います。実は憧れていたのは私ばかりではなく、草間弥生さんも、リアルタイムで憧れて、オキーフに手紙を書いたことがあると本に書かれていました。「日本からアメリカに渡り画家として活動したいのですが、どうしたらよいでしょうか?」というような切実な手紙を書かれたそうです。ところが送られて来た返事は、「あなたは日本人なのに、なぜアメリカに来ようとするのですか?」と書かれていたというのです(苦笑)。
これは私も経験がありますので、オキーフの気持ちも草間さんの気持ちもよくわかります。私は、韓国で若い作家志望の人から「日本で個展をするにはどうしたらいいですか?」「日本で美術を勉強するにはどこの美大がいいですか?」と、聞かれるからです。ドイツに留学した時は、逆に「なぜ日本人なのにドイツの美術を勉強したいのですか?あんなにすばらしい文化があるのに...」とも言われました。
これはですね、「人はそれほど深い意味で相手に善かれと思うことは安易に言えない」ということの一つの例です。
むしろ、「人が何と言おうとニューヨークが私を呼んでいる」と行ってしまった草間さんの決意が本物ですし、誰かが「彼処に行けば何とかなる」ということを鵜呑みにして行動するということは、その時点ですでに自立した自己の判断になっておらず、そのような動機でしたことは、とても脆弱な力しか発揮し得ないものだと思います。
また、人の導きというのは、そのような恣意的な形ではなく、自然で偶然の巡り合わせとしか言えないような、手繰り寄せるようにして、与えられるものと思います。
東京国立近代美術館で、草間さんの初期の小さな暗い花の油絵をかつて見た時、オキーフへのこの憧憬を覗き見たように思いましたが、また一方でオキーフに突き返されたことが、その後の彼女を彼女ならしめた、そのように作品が導かれた、と感じたのでした。画家として存在するというのは、そのように応え、そのように独立しているものだと思います。
しかしオキーフを語る時に、写真家スティーグリッツの存在なくして語ることは出来ません。この二人の関係は魅力的で、いくつか小説化され、映画化されて紹介されている程です。スティーグリッツはオキーフのために、そしてアメリカの若い作家たちのために、ニューヨークに291ギャラリーを開廊しました。またオキーフの美しい写真がスティーグリッツによって多く残されたのことも、オキーフの魅力を一層高めることに貢献しています。
291ギャラリーの当時のパンフレットが、京都国立近代美術館の所蔵品として展示されていたのを見たことがあります。今となってはそういうものも貴重な資料になっています。
東京国立近代美術館には、スティーグリッツの空の写真がよく展示されていることがあります。まさに抽象的な写真の先駆者でしょうね。とにかくアメリカの写真史に必ず最初に登場する人物であり、その写真も今なお色褪せることの無い彼独自の存在感を主張し続けています。
オキーフの小さな白い花の小品を、東近美で一度だけ見たことがあるのですが、それ以来ずっと見かけません。また出会いたい作品の一つです。
私の蔵書のオキーフ画集、関連図書をご紹介しておきます。
Georgia O’Keeffe Museum、Peter H. Hassrick、Harry N. Abrams (1997/9/1)
Georgia O’Keeffe: A Celebration of Music and Dance、Katherine Hoffman,George Braziller (1997/10)
『ジョージア・オキーフ―崇高なるアメリカ精神の肖像』、ローリー・ライル著、Parco出版局 (1984/01)
次々と本は流れ去り、しかしまた私の元に訪れます。昨日は『間接的言語と沈黙の声 (メルロ=ポンティ・コレクション 4)』が届きました。監修は木田元氏。
この人の名前は、ハイデガーの著書にも度々目にするので、凄い人だと思っていましたが、今朝サイトで調べて、さらに一層興味を持つようになりました。もっと知りたい人の一人です。著書『闇屋になりそこねた哲学者』を市の図書館に予約しました。内容には、「満州での少年時代。江田島の海軍兵学校で原爆投下を目撃した日。焼け跡の東京でテキ屋の手先だったとき。はじめてハイデガーを読んだころのこと。…波乱にみちた人生を縦横に軽妙に語る。日本を代表する哲学者の自伝のような本。」と書かれています。
またWikipediaには、「3歳のとき一家で満洲に渡る。海軍兵学校から山形県立農林専門学校(現在の山形大学農学部)を経て、東北大学文学部哲学科に編入学。当時は敗戦直後の混乱期だったため、闇屋のアルバイトで自活しながら毎日10時間近くに及ぶ猛勉強を続け、大学1年のときドイツ語を、2年のとき古典ギリシア語を、3年のときラテン語を習得。1953年に学部を卒業して同大学院哲学科特別研究生課程に進み、フランス語を習得。....」と書かれていました。本当に凄い。もっと勉強しておけばよかった。。。いや今からでも遅くはない、これからも絵を描きながら勉強しよう!と決意したのでした。。。(笑)。
この『間接的言語と沈黙の声 (メルロ=ポンティ・コレクション 4)』は、メルロ=ポンティの芸術に関する文章を集めた貴重な1冊です。その最後の木田氏の最後の解説の一番最後に、とても好きな言葉を見つけましたので、書き出しておきます。これはサルトルが追悼文に書かれている、最後に交わしたメルロ=ポンティの言葉だそうです。
「ぼくはたぶん、自然について書くことになるだろう。...ぼくはホワイトヘッドのなかで、自然はぼろ布をまっているという驚くべき文章を読んだのだ。」
彼の著書『眼と精神』(木田氏によって「絵画を通して、画家たちがそこで見たり描いたりしている世界、彼らの作品がその秘密を洩らしてくれる感覚的世界、つまり「自然」の存在論を素描しようとする」著作と解説されています)そして『見えるものと見えないもの』に、この言葉が凝縮されていると言えましょう。
そして私は、いろいろな人がこれと同じことをさまざまな表現で書き記していることを、あちこちで拾い集めながら、読書を楽しみ、制作する毎日なのです。
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