アートにおける「ほんとうのこと」
アート . 時事同じ姿勢、同じ椅子で作業をしていると、身体に良くないことが体験的にわかるような年頃になって来ました(苦笑)
食べ物のアレルギー、や接触湿疹などと同じ原理です。
1日のうちで、色々工夫して、同じことをし続けないようにしています。
制作をしながら、同じことをふつふつと考えてしまうことをなるべく文章にしてしまうことも、心身の健康にも良いようです。
新しい時代に浮上した「真実」「ほんとうのこと」
さて、このところ「真実」を突きつけられるようなケースが頻繁に起こるようになりました。
これも時代の一つの傾向なのでしょう。
私たちはあまりにも「ほんとうのこと」を知らない。
歴史的なこともそうですし、経済、政治、環境、日常の例えば電気って?インターネットって?
というような様々なことなどなど。
振り返ってみると、とりあえず「ほんとうのこと」を知らなくても生きて来れたのでした。
情報が増えれば増えるほど、フェイク情報も氾濫し、ますます「ほんとうのこと」がわからない。
だから、とりあえず知らなくても大丈夫そうなことはなおざりになって行きます。
しかし、新型コロナのパンデミックが起きたことは、人々の意識を一変させました。
「ほんとうのこと」を知らないと、生命の危機に直面することを経験するようになったのですから。
アートは等閑(なおざり)から脱出する扉
しかし全てが一度機に変わるわけではありません。
依然としてまだまだアートのことは、日本の多くの人にとっては等閑のままです。
なんとなく胡散臭そうだったり、良くわからない世界。
だからとりあえず、生きて行く上ではわからなくても、生活には問題なさそうだから、わかろうとすることは先延ばしという人が多いと思います。
経験的にわかって来たことは、海外生活が長かったり、海外旅行を経験した人は、この場合例外ということです。
他の文化を知ろうとした時に、アートは言葉が通じなくても知り合える世界と気づき、本能的に興味、関心を持つようになるからです。
そういう人は、その他の様々なことが等閑になっていたことに気づき、アートをきっかけに歴史、経済、政治、哲学、宗教について幅広く興味を持つようになります。そうすると、逆に自然にアートの世界もますますわかるようになって行きます。
アートの「虚実皮膜」
アートの世界には、「本物」という言葉があっても「真実」が取り上げられることはあまりありません。
それと「ほんとうのこと」もこれまであまり語られて来なかったと思います。
これは、私が思うにアートが「装飾と粉飾」や「現実と仮想現実」「真実と神話」というようなギリギリのところに存在しているからです。
アートばかりでなく、文化、芸能、全般に共通する性質です。
それは逆に突き詰めると、アートほど「ほんとうのこと」を包み隠さず示して来たものはない、とも断言できるかもしれません。
日本の芸術論には「虚実皮膜」という素晴らしい言葉が残されていますが、
ほんとうのことと嘘とは紙一重。ギリギリでその裏表にあるからこそ楽しい、それが芸術の真実であるとも伝える言葉です。
となると、今後仮想現実の社会が進んでいくとして、ますますこのアートの「虚実皮膜」性を有効活用するような方向で楽しめないと、世の中について行けなくなることは、十分予想できることです。
例えば、いつまでも「本物の『ハンコ』でなければ、本当を証明できません。」なんて言っていたら、立ち行かなくなるのは目に見えています。
仮想現実における証明というのは、おそらく将来的に全てがビックデータでつながった時に、「嘘が生じ得ない」状況に自然となり、証明が必要にならなくなるのだということを知る必要があるからです。
それはツイッターやFacebookのようなソーシャルメディアを利用している人は、やがて嘘をつけなくなる社会が来ることを今でも薄々気づいていることと同じ話です。
それと同じで、アートに嘘はあるのか?と考えてみましょう。
アートには嘘が生じ得ない。
なぜなら「ほんとうのこと」しか形にならないからです。
もちろん反論する考え方があるでしょうね(苦笑)
アートには「真贋」という事件が良く起きます。
しかし、これこそが、その証明です。
偽物が出回るほど、その作品あるいは作家は魅力的であるという「ほんとうのこと」を伝えていることだからです。
偽物も、やがて必ず暴露されてしまいます。鑑識眼を持つ人が必ずいるからです。ですので、偽物のアートでさせも「これは偽物です」という真実を語っていることになるわけです。
アートの「ほんとうのこと」とは、実のところ本当に深い言葉なのです。
良く考えてみましょう。アートには虚構も現実も同時に存在していることを。
つまり、嘘も見えるし、ほんとうのことも見えるようになっている世界なのです。
虚構を見たい人には、そう見えてくるし、現実を見たい人にはそれを見せているのがアートです。
あるいは、これを行き来することが楽しいということになっています。あるいは、そのどこまでが現実で、どこからが虚構かを見極める洞察力を高めてくれるとも言えます。
アートとして形をなし、存在した瞬間に、「嘘」も「ほんとうのこと」も見せてしまう。
しかしこれを感受するあり方は人によって様々であるので、敏感に感じる人もあれば、のんびり時間をかけて見えるようになる人もいれば、鈍いつまでもピンと来ない人もいるわけです。
それらの様々なケースが、その人にとってのアートの「ほんとうのこと」なのです。
アートは、世現に起こる現象の雛形です。
これをよく心得てアートを見た時に、様々な気づきが用意されていることに気づいて行くでしょう。
そして、アートを通して物事の見極め、さらには自分自身の判断力、観察力を磨いて行くことができるようになって行きます。
それって、アートだけのこと?というご意見も出て来そうですね(苦笑)
デュシャン登場により、日常の様々なものですら、それをアートと見立てた瞬間に、それがアートになるということも付け加えておきましょう。
ただし、雛形になるためには、自分の既成概念崩しを徹底的にする、修行のような感じになりますね。その先には、世界のすべてのものがアートに見えてくる世界が待っています。
アートを通して「ほんとうのこと」を知る道
では、アートを通して「ほんとうのこと」を知りたい、と思った場合、どういう道のりがあるでしょう。
入門コースは、美術館に行って、ガラス越しでもよいから「本物」をたくさん見ることです。
しかし、このコースの終わりには、歴史的に有名な作家のこと、作品そのものは、どこまでも直接には真実が見えて来ないことに気づくことになります。
中級コースは、現実に今存在している作家のことを、様々なメディアを通して調べて、直接見れるものなら見てみることです。会えるものなら会ってみることです。
しかし、このコースの終わりには、ただ見たり、知るだけの体験では必ず物足りなくなって行きます。
そこで上級コースは、自然にめぐり遭ったアート作品が、もし自分の身の丈にあっものであれば、まず一つ買って生活に取り入れてみることです。
それはただの造形物ではなく、「世界の現象」の雛形であると見た時に、その作品は必ず、様々なことをあなたに語り始めるようになって行くことでしょう。(ここがポイントです。お忘れなく。)
アートを楽しめる人が、これからの仮想現実の社会では、大変必要とされます。
今までは実の世界しか認めていなかった人も、アートのこの「虚実」性と出会うことで、きっと新しい社会を楽しめるようになることでしょう。
そして、新しい社会への不安よりも、もっと様々な可能性が開かれていることに、胸をワクワクさせて行くことができることでしょう。
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