アングラからの脱却
画家とは?画家になるには?先日、唐ゼミの野外演劇を見て来ました。
唐十郎率いる唐組を見たのが、今から約20年以上前のことです。
唐ゼミとは、唐十郎氏が横浜国立大学人間教育学科で教鞭をとった時に
学生参加を前提に結成された劇団であることをはじめて知りました。
少しだけ縁を感じました。
最初のきっかけはそういうことは全然知らず、
長野市の権堂商店街の入り口で、
何やら予行練習を兼ねたパフォーマンスが興行されていて、
人影まばらな古い商店街での、若い演劇人の卵達の一生懸命の姿に、
ちょいと胸をキュンとさせられたからです。
演目の唐十郎作『木馬の鼻』は、長野の肌寒い夜空の下でも、
相変わらずハチャメチャに元気が良く、
シュールで奇想天外の内容でした。
隣に座った人の良さそうな若者が、
どうやら何も知らずに来てしまっていたようで、
申し訳無さそうに私にこっそり
「こ、これって、一体何が面白いんですか?」
と真面目な顔をして恐る恐る聞いて来たので、
「いや(汗)、非日常を日常の光景の中で楽しむってことですよ...。」
って答えておきました。
「そうだなぁ、絵画だけでなく、演劇にしても真面目に学校へ行って、
真面目に仕事をして生活されている人たちには、
何だかさっぱりわからないことなのかもしれない」
そう感じながら帰って来ました。
それにしても、主人公の女性は「よ~し、やったるわーい!!!」
ってな感じで元気がもらえ、
次の日から、「よーし!こうなったら破れかぶれだー!!!」
と心の底で叫んでいる自分がありました(笑)。
実は、2月の個展で得た収入もとうとう先月末までの制作生活ですっかり使い果たし、
さてこれからどうしようかと、
投げ出しのお金で『木馬の鼻』を観劇したのです。
きっと何かメッセージがあるはずだと思ってのことです。
いや、しかし何でも至る所にメッセージがあるものです。
やっぱり大きな気づきがありました。
「そうか、あの時も感じたけれど、唐十郎作品って、やっぱりアングラなんだなぁ」
と改めて今回実感しました。
そして確かに、自分の中に、時代のせいか、
そういうアングラな活動に憧れる性質が無意識の底にあると自覚したのです。
その性質が、これまで私の画家としての制作活動を知らず知らず、
蟻地獄の砂の器のように(苦笑)、
アングラな方へ方へと引きづり込もうとしていたことにやっと気付くことが出来たのです。
例えば、人に理解や評価されないことを敢えてするとか、
稼げなくて本望とか、そういう貧困芸術家の美学のようなものとして、
私の中にまだアングラなものが密かにどこかで息づいていたということです。
もしかしたら、私だけでなく、アーティストで稼ぐことを諦めている人は、
こうしたものを持っている可能性があるのではないでしょうか?
誤解してもらいたくないのは、あくまでもそれは受け止め方の問題で、
唐ゼミがそうだと決めつけて言っているわけではありません。
そういう目で私は彼らの演劇活動を見ようとし、
ある種の共感を持つと同時に、「自分の不甲斐なさを許していた」
ということに気付いたということなのです。
そしてその反省として、
「作品を売るだけで制作生活が維持して行けるだけの画家になりたい」
と正直に実感しました。
実は唐ゼミはかつてのアングラから少し変化しているのも事実なのです。
公演チケットを買った時、横浜国立大学の領収書を手渡されました。
大学が後援をしてしていて、興行資金を先に工面し、
その代わりにチケット販売で得た収入がそのまま大学に戻されるという仕組みです。
これで劇団員も取り敢えず興行に打ち込めますし、
たとえ観劇する人があまり集まらなくても興行だけは出来ます。
また大学も学生の経験の場を確保しながら、
大学の宣伝も出来るということなのでしょう。
見る側からすると、アングラさへの抵抗感が、大学の権威で緩和される分、
しかし大学にお金を出してもらっていることで、
アングラのハングリー精神が目減りするイメージは否めません。
だからある意味「アングラからの脱却」が意図されていることに、
私たちは気付かなければならないのです。
ですから、アングラに憧れること自体が、
すでに現実的ではないという事実が突きつけられています。
「アングラでは、芸術活動を維持することは出来ませんよ」
と、アングラの最前線を進んだ唐十郎氏が認めたという現実があるということです。
このことを私たちアーティストは、重く受け止めなければなりません。
これにやや類似して、これまでご寄付を募り、
言わば補助輪付きの自転車操業をして来た私ですが、
これに安穏としていてはいけないと改めて自省しました。
これまでの「ご寄付のお願い」のページを「ご支援のお願い」に書き改めました。
去年の寄付活動は、美術館での発表として多くの方々の期待を支援という形で繋げて、
制作発表が支援・協力者との共同の活動であるというコンセプトがありました。
しかし、個展開催へ向けて寄付を集めるわけにはいきません。
あくまでも販売収入の見込めないイベントのみに支援を募るべきなのです。
ハングリーパワーを萎えさせてしまってはいけないのです。
あるいは、しかたなくアングラに陥ったとしても、
自らアングラを自称するなどもってのほか、
そこから這い上がって行かなければなりません。
そこで、とにかく個展開催までの3ヶ月間をここは何としても
「作品を純粋に販売しながら制作生活を維持しよう!」
そう決意し立ち上がりました。
追伸
唐ゼミの公演情報は、下記リンクをご覧下さい。
全国巡業中です。応援しましょう!
http://karazemi.com/perform/cat24/nomad.html
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