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Written by yuko on 11/07/2011

育った家、父のこと

家族

今日は父の11年目の命日でした。この11年を振り返ると、胸が一杯になります。亡くなった父のことを思い出して、淋しいと思うことはそれ程ありません。むしろ、亡くなってしばらくは、こういう時はこんなことを言うだろうな、と想像できるほどに父の考え方や言い方が頭にこびりついていている自分に驚き、その影響の強さに煩わしささえ感じたくらいなものです。

それでも自分の足で、しっかり歩いて来れたのは、父の教育の賜物です。それで感謝の気持ちで胸が一杯になるのです。

続きを読む七面鳥の悲劇

私は、父のお陰で、とても恵まれた環境に育ちました。海も山もある土地で自然に包まれて、のんびり過ごすことができました。自宅には玄関先の庭だけでなく、中庭、裏庭もあって、梅、松、竹、夏みかん、車輪梅、浜木綿等が植えられていました。全て父が育てて手入れをしていました。

夏の暑い日には夕方になると水まきの音とともに、土ぼこりの匂いがして来て、ひんやりとした風を楽しみました。家の造りが少し変わっていて、天窓も床窓もある家で、至る所窓だらけでしたから、夏でも土が潤うと、涼しい風がどこからともなく入って来るようになっていました。

続きを読む父の収集癖

しかしながら、これが台風が来るとなると、大変な大騒ぎ。どんなに小さな窓にも雨戸がついていて、それをひとつひとつ閉めてまわるのが大変なのでした。特に我が家の天井は、少し変わっていて、どこも3m以上の高さがありましたから、天窓は、雨が降り始める数分のうちに長い竹の棒でするりと閉めなければなりませんでした。びしょびしょになってからでは、雨戸が重くなって滑りが悪くなるからです。

考えてみれば、網戸がつけられたのは、かなり後になってからで、それでもごく一部の窓だけでした。天窓も床窓も高さが20cm弱くらいでしたから、夏の間は後はどこもたいてい開けっ放しでした。父によると、吉田兼好の言葉の「家つくりようは、夏を宗とすべし」という考えに従ったのだということです。

続きを読む母への手紙

夕方になると、どこからともなく蚊が入って来ましたが、窓を閉めるのではなく、蚊取り線香を炊きました。寝る時は、蚊屋を釣っていました。昔はのんびりしていましたし、いつでも父がいるから、不用心だなんて少しも感じたことがありませんでした。

我が家では、夏の大イベントがひとつありまして。。。それは年に一度だけ、コーラを家族4人で飲む日でした。その日のためだけに4つのお揃いのコーラフロート用のグラスがありました。それが並べられ、瓶コーラが均等に注がれて、最後に父がドライアイスをのけて、まだ固いレディーボーデンのバニラアイスを大きなスプーンですくって乗せてくれるのです。乗せた瞬間に泡がぶくぶく出て、コーラの香りが漂います。コーラフロート用の細長いスプーンで、アイスをすくいながら、少しずつコーラを味わいました。コーラとバニラアイスが混ざった泡のあたりが、一番香ばしくて、美味しかったものです。

続きを読む母への手紙ー自律のすすめ

コーラやレディーボーデンのアイスは、父の独断で子供の健康にはあまり良からぬもの、ということで、1年に1度しか頂けませんでしたが、その1度だけというイベントで、このコーラに関しては、どれほど美味しい思いをしたか知れません。

しかしながら、その他の甘いものを沢山買って来る父の病気は、なかなか手強く、私は幼少時は、ありがたいことに甘いものを欲しいと感じたことがありませんでした。コーラにしても、1年に1度だけ飲めるのは楽しいことでしたが、2回も3回も付き合わずにすんで、ありがたいとさえ思っていた程です。

本当は、あまり恵まれずに育った方が、幸せだったんじゃないかと思うことがあります。今でも、父の愛情過多の思い出は、私にとってくすぐったくもあり、またほろ苦い思い出でもあります。

沢山の買い物をして人生を謳歌した父でした。大量の本、硯、石、壷、仏像、骨董品、流木、盆栽、金魚等々が家中にあり、どれもこれも集め始めると止まらなくなる父の病気は、なぜかその当時は、夫婦喧嘩の種にはなっても、そのことで借金地獄になることもなく、それでも存分に贅沢して生計が成り立っていたわけで、この時代から振り返りますと、まるで貴族のような生活でした。

年に一度は家族4人で旅行し、妹はグランドピアノを買い与えられ、私はドイツに留学しました。母は娘二人が独立してからは、お茶の稽古に専念し、教えることが出来るまで、お金をつぎ込みました。父は誰にも遠慮することなく、存分に買いたいものを買い、食べたいものを食べ、老人になる前にさっさと亡くなりました。

その父の贅沢三昧の生き方を見て来た私は、「世の中には、このようなわけのわからぬものに価値を見出して、お金を使うことができる人がいるのだ」ということを身近に感じて育ったわけです。だからこそ、わけのわからぬ絵を描いても生きていけるのではないかと、思うような人間になれた、あるいは、なってしまったのだと思うのです。おそらくこの感性は、誰もが持てるものではないと思います。

こんなことを言うのも何ですが、自分の生き方というのは、自分がつくるのだ、というのが昨今の考え方だと思いますが、私は自分の人生はこうなるべくしてこうなった、としか思えません(ちょっと無責任かもしれませんけどね)。そして、もし父の実態を知った人があれば、誰もがこの親にしてこの娘あり、とすぐに納得してしまうに違いないのです。。。(苦笑)。仕方ありませんね。それが運命というものなのかもしれません。

さて、父が今の私の絵を見たら、いくらで買ってくれるでしょうか?たまには夢の中で父に会って、そのあたりのことをよ~く聞いてみることに致しましょう(笑)。

my-father

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