制作のあいまにー「アートは限られた人のもの」

あれから、結局ハイデガーの『言葉への途上』を買ってしまいました(苦笑)。
私が気になった詩は、シュテファン・ゲオルゲの『語(ことば)』という詩でした。
泉の女神の水底の宝珠を奪ったのですが、この宝珠が掌中から滑り落ちるのです。
そして語(ことば)が欠けてしまうという内容です。
ご興味のある方は、是非本を手にして下さいませ。

この本も実に高価なもので、買える方は限られているでしょう。
しかしそれでも買わずにはいられない、という人が、現にここにいるのです。

芸術も哲学も限られた人のものになってしまうのは、致し方ないことだと、最近はアートの普及活動を諦めるようになって来ました。

もし、この本を安価にして普及しようとしても、本当にじっくり味わうゆとりのある人は、極わずかなのです。
むしろ、高価にすることで本当に必要とする人に持ってもらうことが、本や著作者の幸せであるに違いないのです。

というのは、最近私はこれまで買い集めて来た美術書、啓発書等を、毎日Amazonマーケットプレイスで売るようになり、切実にそのことを実感しているからです。

これまでにも引っ越しのたびに処分して来ましたが、それでも100冊くらいは高価な値段のつく本がありました。

やはり絶版になった美術書の価格は、なかなかのものです。
それに比べて、啓発書の何と安いこと。。。この古本の相場から学ぶことがとても多くありました。
安易に多くの人が手に取るようなタイトルの本は、安く大量に出版されるため、古本として1円で売られているのもあるくらいです。新品は、さぞかし売れないことでしょうね。。。

しかし、あまり書いてある内容がタイトルからは想像もつかず、どう考えても一般の生活に関係ないようなものが、実は定価を上回る値になっていることがあります。
それだけ希少価値が高いことを、その世界を知っている人には知られている、ということなのでしょう。

これはまるで、美術の世界と同じです。
人気のあった作品が、急に値崩れを起こしたり、多作の作家の作品に、皆が飽きて、見向きもしなくなったり、人気が出て来ると、わざと作品を出さなくなる作家すらいるとかいないとか。。。

感覚が麻痺したところで、美というのはもののみごとに色あせてしまうものなのです。

泉の底から、美しい宝珠を安易に持ち去ろうとした瞬間に、宝珠は宝でなくなるということでしょう。

さて、このような経験から、私もある決断をするようになりました。
残念なことですが、なるべく多くの人に、気軽にアートをと思ってはじめたプリント作品ですが、
今後は方針を変えることに致しました。
もう制作しないか、制作するとしても、1点限定でものすごく高価なものにするかのどちらかです。
また、これまでエディションとして26とか46とか66をつけていたものも、実際は2枚限定だったとか、結局1枚限りで、それ以上はつくらないという方向で、版としての画像を消去しようと思っています。
これは、サイトやメールを通して、所有されている皆さんにお知らせして、後々のためにも、大切にしてもらえるものになることでしょう。

初期に私のプリント作品を評価して下さった方には、私なりの感謝の気持ちを表わしたいということもあります。それぞれの方に、実際の限定数が何枚であったかの証明書を発行し送付することに致します。

私自身も、私という画家に期待して買って下さった方々への感謝の気持ちを、今後の制作に表わして行かなければなりません。必ずや、「あの時、思い切ってあの作品を買っておいて正解だった」と言って頂けるような仕事になるよう尽力してゆく所存です。

今後の制作活動を乞うご期待下さいませ。

尚、ご愛顧頂いておりましたシスターシップは、今月末を持ちまして、しばらく休業とさせて頂きます。
ご了承下さいませ。

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